食中毒とは何なのか?

食中毒とは何なのか? 知って得する最新情報

湿気や気温が高い時期になると気になることの1つに「食中毒」があります。一般的なイメージとして、梅雨の時期にその件数が多くなると思う人が多いと思いますが、実際にはどうなのでしょうか?実際に時期による食中毒件数の差があるのかどうか、その原因、対策方法などを1つ1つ分かりやすく解説します。

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食中毒とは?

食中毒とはウイルスや細菌など食中毒の原因となるものが付着した飲食物の摂取で起こる腹痛、下痢、発熱、嘔吐などの症状、健康被害の総称のことをいいます。原因によって症状が現れるまでの時間や症状、有効な対策方法などに違いがあります。

食中毒患者数の年次推移

日本国内では毎年1万人以上の食中毒患者が記録されています。しかし、この数は保健所に届け出があった数なので、病院に行くほどではない軽症のものを含めると実際にはもっと多くの患者がいると推測されます。それほど食中毒というのはどんな家庭、飲食店でも発生しうる、油断の出来ないものであると言えます。

食中毒は梅雨の時期に多い?

湿度や気温が高くなる梅雨から夏にかけての時期に食中毒が多くなるイメージが強いと思いますが、実際の食中毒の患者数数を見ると必ずしもそうでもないことが分かります。

2019年の食中毒患者数(月別)

月別の食中毒患者数を見ると、食中毒はある時期になると爆発的に増えるのではなく、一年を通して発生していることが分かります。
食中毒を引き起こす大きな原因としては主に「ウイルス」と「細菌」が挙げられます。12月から4月にかけての寒い時期にはウイルスが原因の食中毒が増え、6月から9月の湿度や気温が高くなる時期は細菌が増えやすくなるために、細菌による食中毒の割合が増加する傾向があります。原因に違いがあるため、被害が出たときの大きさ、その対策方法などにも違いがあります。

2019年に食中毒を起こした原因物質の割合

ウイルスにはノロウイルスが、細菌にはカンピロバクター、ウエルシュ菌、サルモネラ属菌、黄色ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌(O-157等)などが食中毒の主な原因となっています。
ウイルスと細菌ではその性質が異なるために流行する時期に差が生じます。

「ウイルス」は特性上、物や食品などに潜んでいる時点では増殖することはありません。しかし手指や食品などを介していったん体内に入ると細胞中に入って増殖し、食中毒を引き起こします。また、ウイルスは低温や高温、乾燥した環境など幅広い環境下でも比較的長く生存できる特性もあるため、主に寒い時に流行する傾向があります。ウイルスを熱処理して死滅させるためには90度以上の熱でないときちんと死滅させることは出来ません。

「細菌」は温度10度以上でなら物や食品上で増殖できるという特徴があります。特に30~40度を好み、この環境下では活発に増殖を行います。また、ある程度以上の湿気も好むため、気温と湿度が高くなる梅雨から夏の時期にかけて細菌による食中毒が増える傾向があります。
一方、65度以上になるとほとんどの細菌は耐えられず死滅します(芽胞を形成する能力を持った細菌は100度の熱にも耐える)。このように細菌は温度によって繁殖能力や生存の可否が大きく左右される特性があります。

食中毒の対策と原因

食中毒に対する有効な対策は大きく分けて「3つ」あります。

食中毒予防の3原則

まずは、飲食物に食中毒の原因物質を「つけない」ようにすることです。
手洗いや調理に用いる器具の清掃や除菌をこまめに行い、清潔にすることで原因物質が食品に付着することを防ぐ、飲食物をきちんと密閉して外部からの汚染を防ぐなどの対策が有効です。

次に、増殖・繁殖を防ぐこと。これは主に細菌への対策となりますが、菌を「増やさない」ように適切に冷蔵・冷凍保管する、調理後の完成品は室温に長くさらすことが無いように早めに食べるなど菌が増える時間を与えないという対策です。

最後に「加熱」です。高温で加熱することで、ある程度のウイルスや細菌は殺菌が可能なので、調理時は食材にしっかり熱が時間をかけて伝わる必要があります。目安は食材中心部が90度以上で数分間維持できる加熱です。この条件を満たせることでウイルスや細菌などをある程度、殺菌する効果が得られます。

これら3つの対策が食中毒対策として有効です。ただし、これらを行っても完全に食中毒を防ぐことはできません。何らかの理由で最初から食材そのものに原因物質が付着していた場合、加熱処理での殺菌効果が重要となりますが、生で食べるものや熱への耐性が強い物質の場合、殺菌効果が得られない場合もあるためです。

このように完全・完璧な食中毒対策はありませんが、それに近づけた対策は可能です。また、原因物質によって、より最適な対策や注意点などが異なるため、それぞれにあった行動をとり、より効果を上げることが重要と言えます。

原因物質別の特徴一覧は以下の通りです。

食中毒の主な原因物質とその特徴

ノロウイルス

ノロウイルスはカキやその他の二枚貝類に存在することが多く、これらを生や不十分な加熱で食べた場合に感染する危険性があります。また、感染者の嘔吐物や排泄物に多くのノロウイルスが潜んでいるためこれらの処理時にも注意が必要です。これらの処理、除菌には次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)が特に有効です。

感染後の潜伏期間は1~2日間で感染後腸内の細胞に寄生します。食中毒での主な症状は嘔吐、下痢、腹痛、頭痛、発熱、筋肉痛、倦怠感など多岐にわたる症状が現れます。

一般なウイルス同様、ノロウイルスの場合も感染後しばらくすると体内に抗体(免疫)が作られます。このため本来はその後の感染を防ぐことが期待できるのですが、ノロウイルスの場合、細かな型の違うものが何十種類もいるため、まったく同じ型で無い場合は発病を防げないという特性があります。また、感染力がかなり強く、ウイルス数が少なくても食中毒症状が発生する特徴もあります。

このウイルスに対する対策はカキなど二枚貝類の加熱処理をしっかりとすること、感染者からの二次感染の対策をすることの2点です。特に感染者からさらに感染(人から人へ感染)が広がる特性がある点は特に注意が必要です。

カンピロバクター

カンピロバクターは主に豚、牛、鶏などの腸内に生息している細菌です。これらの食肉を不十分な加熱で食べた場合に感染する危険性があります。

潜伏期間が2~5日間で期間が長い特性があります。主な症状は嘔吐、下痢、腹痛、発熱、頭痛、倦怠感などです。

この菌は乾燥に弱い特性があるため、調理器具を清潔にした後、しっかりと乾燥させることが対策として効果的です。

この菌に対する対策は食肉をしっかりと加熱すること、調理器具の乾燥の他にも、犬やネコなどのペットからの感染例もあるためペットの衛生的管理も重要となります。

ウエルシュ菌

ウェルシュ菌は土や水の中など自然界に広く存在しているだけでなく、健康な人や動物の腸内などでも保菌している身近な細菌です。そのため食材そのものにも付着し生息していることも多く、特に食肉や魚介類において保菌率が高い特徴があります。

潜伏時間は6~18時間程度で主な症状は下痢と腹痛です。嘔吐や発熱などの症状例はほとんどありません。

酸素を嫌う特性があるため、煮込み料理の鍋底など酸素が少ない箇所で増殖する危険性が高い細菌です。

この菌に対する対策は加熱調理した食品は小分けするなどして急速に冷却保存することです。また、加熱調理をする際はきちんとかき混ぜ、空気が全体に混ざりあうようにしながら、しっかりと加熱することが効果的です。

サルモネラ属菌

サルモネラ属菌は健康な人や豚、牛、鶏などの腸内などで保菌している、自然界に広く生息している細菌です。豚、牛、鶏などの食肉や卵を不十分な加熱で食べた場合に感染する危険性があります。

潜伏時間は8~96時間と幅広く、主な症状は嘔吐、下痢、腹痛などです。症状は1週間以上の長期にわたることがあり、子供や高齢者は特に重症化しやすい傾向もあります。

この細菌は乾燥に強い特性があり、また、感染力が高く、細菌数が少なくても食中毒症状が発生する特徴もあります。

黄色ブドウ球菌

黄色ブドウ球菌は人や哺乳動物などに広く分布しており、特に鼻、口の中、腸内などに生息しています。健康な人の20~30%が保菌している身近な細菌です。おにぎりやパンなど直接手を使って作る料理から感染することが多い細菌です。

潜伏期間は1~5時間(平均3時間)と比較的短く、主な症状は激しい吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などです。症状は一般的に1日か2日間で治る傾向があります。

この細菌は食品中で増殖する時に「エンテロトキシン」という毒素を生成します。このエンテロトキシンは熱にとても強い特性があるため、食品の加熱処理では破壊できない可能性が高いです。そのため調理後の残り物を再加熱などで後々食べるという方法は危険性があります。完成した食品は残さず早めに食べること、手洗いの徹底、食材は10℃以下で保存するなどの方法が最良の対策となります。

腸管出血性大腸菌(O-157など)

O-157などの腸管出血性大腸菌は「ベロ毒素」と呼ばれる毒素を生成する大腸菌で、動物の腸内などで保菌されています。豚、牛、鶏などの食肉を不十分な加熱で食べた場合に感染する危険性があります。また、野菜にも付着している場合があるため、それらの洗浄も重要です。

潜伏期間は3~7日間で主な症状は激しい腹痛、下痢、血便です。病状を発症した人の内6~7%において、2週間以内に、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重症な合併症が発症します。このHUSを発症した人の致死率は1~5%とされています。これらのことから幼い子供や高齢者は特に注意が必要な感染症です。

腸管出血性大腸菌は感染力が高く、細菌数が少なくても食中毒症状が発生する特徴があります。

この細菌への対策法は食材や調理器具の洗浄や手洗い、食材の加熱を徹底することなどです。加熱の際は中心温度75℃以上で1分間以上の加熱をすることで腸管出血性大腸菌を死滅させることができます。また感染者の排泄物にもこの細菌は多くいるため、その対策として取っ手やドアのノブなどの除菌手洗いの徹底もとても重要です。

食中毒に関するまとめ

今回のまとめ

食中毒は一年中、その危険性がある厄介な感染症です。そのため対策方法として「食中毒予防の3原則」を徹底することが第一に重要となります。しかし、季節や時期によって流行しやすいウイルスや細菌が変化するため、食中毒予防の3原則と共に個別の対応方法もあわせて行っていく必要があります。今の時期はどんな食品・食材の危険性が上がるのかを理解するようにして、それにあわせた対策を日ごろから行っていけるようになれば食中毒の危険性は自然に低くなります。些細な油断の無いように「食中毒予防の3原則」の徹底と個別対策をきちんと行うことを心がけましょう。

—参考元—
厚生労働省,食中毒
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html

農林水産省,食中毒が多い季節は?
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/statistics.html

NIID 国立感染症研究所,食中毒と腸管感染症
https://www.niid.go.jp/niid/ja/route/intestinal.html