世の中には様々な「抗菌加工」がされた商品が溢れています。キッチン用品、調理用具、バス・トイレ用品、家電、衛生用品など様々な抗菌加工をうたった製品がありますが、これらの商品は細菌に対してどれだけの効果・意味があるのか、安全性や耐久性、商品購入の際の判断基準(認証マーク)などを分かりやすく解説します。
抗菌とは?
抗菌とは細菌の繁殖を抑える効果のことを言います。細菌が増えるのを抑制する効果があるという意味であって、菌を減らすなどの除菌の効果があるという意味はありません。
経済産業省の抗菌加工製品ガイドラインにおいて「抗菌加工製品」における「抗菌」とは、「当該製品の表面における細菌の増殖を抑制すること」と定義されています。
化学的に作られたものや自然由来の抗菌剤などを製品に練り込んだり、表面に吹き付けたりするなどして抗菌加工製品は作られます。
例えば抗菌効果があると表記があるキッチン用品の場合、その商品の表面では細菌の増殖は抑制されるという意味です。ただし、その商品表面の抗菌加工がされた部分をこすったり、傷を付けたりなどして加工がはがれてしまい、その効果がなくなってしまうことがあります。また、汚れなどで不衛生な場合、その箇所では菌の抑制効果は発揮されません。抗菌加工は加工がされた部分のみ有効性があり、その周辺部への効果はありません。
「殺菌・除菌・滅菌・抗菌・消毒」という用語の違いについては下記にて解説してます。
抗菌加工の認証マーク
各業界団体が策定し、基準を満たしたものには下記のようなマークが表示されています。

SEKマーク
SEKマークは繊維製品関係の抗菌加工製品を対象として、繊維評価技術協議会によって認証されたものにこのマークがあります。
主な対象商品としては衣料品、手袋やハンカチや帽子などの雑貨、寝具、タオルなどの日用品、カーテンなどのインテリア用品など多岐にわたる繊維関連商品があります。SEKはS(清潔)E(衛生)K(快適)の略。
繊維製品に関する認証なので、洗濯への耐久性に関する試験も行われ、その耐久性も保証されています。
抗菌効果に関するものだけでなく、マークが示す機能の各種の認証があります。これらの加工に使用する加工剤は万が一飲み込んだ際の毒性、皮ふに触れたときの炎症の有無、DNA(遺伝子)への影響、アレルギー反応といった4つの項目に関する安全試験に合格した物のみが用いられています。
「抗菌防臭加工」
繊維上の細菌の増殖を抑え、防臭効果を発揮します。肌着などの着衣全般やタオルなどでこの認証商品が多いです。認証には黄色ぶどう球菌に関する試験が必須となっています。
「制菌加工(一般用途)」
「抗菌防臭加工」よりも強力に細菌増殖を抑える効果があり、認証条件も厳しくなっています。認証には黄色ぶどう球菌と肺炎かん菌に関する2つの試験が必須となっています。
「制菌加工(特定用途)」
医療分野で使用される業務用製品用の認証マークで、強力に細菌増殖を抑制します。「制菌加工(一般用途)」以上に認証条件厳しくなっています。認証には黄色ぶどう球菌と肺炎かん菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に関する3つの試験が必須となっています。
「光触媒抗菌加工」
酸化チタンなどの光触媒効果を利用して、細菌の増殖を抑える効果があることが認められたマークです。認証には黄色ぶどう球菌と肺炎かん菌に関する2つの試験が必須となっています。
SIAAマーク
SIAAマークは繊維製品以外の抗菌加工製品を対象として、抗菌製品技術協議会(SIAA)によって認証されたものにこのマークがあります。抗菌効果のあるもの、防カビ効果のあるもの、その双方の効果があるもの、抗ウイルス加工、これら4種類に関する認証マークがあります。
主な対象商品としては家電、住宅建材やその設備、トイレ用具や便座、キッチン設備や調理用具、浴室設備やバス用品、事務用品、印刷物、各種梱包保護フィルムから医療用品まで多岐にわたる商品が対象となっています。SIAAマークの登録商品数は2020年7月時点で1279件に及びます。
「抗菌SIAAマーク(抗菌加工)」
抗菌加工がされていない製品の表面と比較して、細菌の増殖割合が100分の1以下であり、なおかつ耐久性試験にも合格し、安全性基準を満たしたものにのみ、この認証が与えられます。
また、使用する抗菌剤は万が一飲み込んだ際の毒性、皮ふに触れたときの炎症の有無、DNAへの影響、アレルギー反応といった4つの項目に関する試験に合格した安全性の高い物が用いられています。
「防カビSIAAマーク(防カビ加工)」
防カビ加工がされていない製品の表面と比較して、特定のカビの生育が基準より抑えられることが確認されていること、製品や使用する防カビ剤がSIAAの安全性基準を満たしていることなどの基準を満たしたものにのみこの認証が与えられます。
「抗ウイルスSIAAマーク(抗ウイルス加工)」
製品上の特定のウイルス数を減少させる効果が確認されていること、SIAAの安全性基準を満たしていることなどの基準を満たしたものにのみこの認証が与えられます。
これらのマークがあるかどうかで、その製品にはきちんとした抗菌効果が期待できるのか、その科学的裏付けがあるかどうかの判断が可能です。
マークは記載されている効果を保証していることを示しています。

認証マークは上記のように商品説明欄に単数または複数の認証マークとその効果の表記、注意書きなどが既定に乗っ取って記載されています。
抗菌加工製品の市場推移
1996年では抗菌加工製品の市場規模は6092億円でしたが、2003年には8603億円に拡大し、その後も上昇傾向が続いています。
特に肌着・下着分野での成長が大きく、この期間で約1300%の成長を遂げています。
他には、キッチン用品、冷蔵庫、温水洗浄便座、タオルなどの分野が100%以上の成長率で拡大を続けています。
このような市場の拡大傾向は現在でも続いており、抗菌加工製品への需要の高さが分かります。
抗菌に関するまとめ

抗菌加工製品は菌が増えない、増殖を抑えるという効果があるものの、少しのちょっとした汚れなどがあるだけでも、その抗菌効果が十分に発揮されなくなるという問題があります。そのため重要になるのが「清潔」に保つことです。抗菌加工製品であるからといって油断はせずに清潔に保つことを心がけ、こまめな清掃を行い、本来の抗菌効果が発揮できるようにすれば、細菌による食中毒対策や衣服の臭い対策など、その効果による恩恵を受けることができます。

また、抗菌加工は細菌の増殖を抑えるだけなので、生物や自然にとって必要な細菌、体にとって良い働きをする細菌などに対する悪影響などを心配する必要性がない点も大きな利点と言えます。
これらの点を理解した上で、正しく商品を利用していければ、日々をより快適で健康に生活を送っていけると考えます。
—参考元—
経済産業省,抗菌加工製品について
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/human-design/koukin.html
一般社団法人 繊維評価技術協議会,製品認証マークSEK 認証基準
http://www.sengikyo.or.jp/sek/
一般社団法人 抗菌製品技術協議会
https://www.kohkin.net/