BCGワクチンの効能、利点、欠点、その対象となる病気(結核)などについて詳しく解説をします。
BCG(はんこ注射)とは?
BCG(はんこ注射)とは結核を予防するワクチンの通称です。
このワクチンには、本来、牛に感染する牛型結核菌を弱めたものが使われています。(弱めた病原体を用いたワクチンのことを生ワクチンといいます。)
牛型結核菌と人へ感染するタイプの結核菌は似ているため、BCGで得た免疫は結核菌にも有効となります。
日本では現在、生後1歳に至るまでの乳児へ定期接種としてBCG接種を行うことになっています。乳幼児期にBCGを接種することにより、結核の発症を60%ほど予防できるとされ、また、その有効期間は約15年と考えられています。
BCG(はんこ注射)の摂取方法
BCG(はんこ注射)の摂取方法は少し変わっていて、他のワクチンのように注射器で腕に注入という方法とは違います。その摂取方法は以下のようになります。

腕の摂取箇所を消毒して、そこにワクチンをたらし塗り広げます。そして、管針と呼ばれる9本の針が付いた専用器具を使ってそのワクチンを皮膚に軽く押し込み、皮膚表面にワクチンが注入されれば接種は完了です。
BCGの副反応(副作用)について
2013年度に約90万人がBCG接種を行い、副反応の報告があったのは174件でした。リンパ節の腫れが74件、皮膚症状が40件、骨炎が10件、全身性のBCG感染症が2件となっています。骨炎と全身性のBCG感染症に関しては重い疾患といえます。
・副反応とは?
ワクチンの接種に伴う本来の作用以外の反応のことを指します。薬などで用いられる用語「副作用」と意味合いは同じです。
一般的に薬での場合は「副作用」、ワクチンの場合は「副反応」という具合に言葉の使い分けをします。
そもそも結核とは
結核は、結核菌という細菌が体の中に入ることによって起こる病気です。
人が結核菌に感染した場合、ある程度の人は数年のうちに発病しますが、その他の人では菌は体内に潜んだまま、発病をしません。この状態では何も症状は現れません。
こういった場合でも、何らかのきっかけで体の免疫力が落ちた際に、潜んでいた菌が活動を始め、結核を発病することもあります。
結核菌は主に肺の中で増え、初期の症状ではせき、発熱などのカゼに近い症状が現れ、症状が進むと呼吸困難や吐血、全身の臓器への悪影響などが現れ、より深刻な症状となっていきます。
特に、小さな子供では全身に及ぶ重篤な症状になりやすいと言われています。
結核感染の新規登録者数
上記の図は結核感染の新規登録者数です。これを見ると分かるように新規の結核患者数はここ30年で下降傾向にありますが、2018年時点でも15590人もいることからまだまだ油断の出来ない感染症であるといえます。
結核での死亡者数の推移
上記の図は結核での死亡者数の推移です。結核患者数と同様、全体的には下降傾向にありますが、2017年に数値が上昇するなどの変動が見られ、2018年には2204人の方が死亡していることも考えるとやはり結核はまだ、過去の病気と言える状況ではないことが分かります。
結核の治療
結核の治療方法は主に薬によるものになり、何種類かの複数の薬を6か月飲み続ける方法が基本です。

2017年の新規感染者の内、治療を開始したのは16702人、そのうち治療が成功したのは11388人(68.2%)、亡くなった方は3754人(22.5%)、残りは治療中などとなっています。
亡くなった方の内訳は下記の通りです。
- 19歳以下:0人
- 20~39歳:10人
- 40~49歳:22人
- 50~59歳:64人
- 60~69歳:240人
- 70~79歳:620人
- 80~89歳:1770人
- 90歳以上:1028人
年齢が高くなるにつれて、亡くなる方が増える傾向があることが分かります。
結核が薬で治療できる病気であるとはいえ、22.5%の人が治療中に亡くなっていること、複数の薬を6か月以上飲み続ける必要がある事などから、ワクチンでの予防が重要性であるといえます。
BCGワクチンのまとめ

- 結核は薬で治療できるとはいえ、その期間は長く、楽ではないので、それがワクチン接種で予防できる効果は大きい。
- BCGワクチンの1度の摂取で長い期間の大きな効果が望める。

- 割合的には低いものの、副反応が起きる可能性はある。
- BCGワクチンを摂取したからといって確実に結核を予防できるわけではない。
—参考元—
厚生労働省,結核とBCGワクチンに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/bcg/index.html
厚生労働省,平成30年 結核登録者情報調査年報集計結果について
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000538633.pdf